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5  人間関係で大切なこと

  この書籍を購入し、ここまで読み進めているあなた、 または目次からこの 5章 を選んで読もうとしているあなた は

今まで人間関係で苦しんだことがおありではないでしょうか。 人は多かれ少なかれ、人間関係で問題を持っているもので

す。 では、もう人の助けなんていらない、一人で生きる と言って、一人で生き抜くことができるものでもありません。 どん

なに頭が良くても、偏差値が高くても、お金持ちでも、ハンサムでも、美人でも、一人では生きることができないのが人間

なのです。 もちろん、一人暮らしは、健康で経済的に可能であればできるでしょう。 しかし、それは寝泊りをするところ、

生活をするところが自分だけで占められている ということであって、一人で生きているわけではありません。 社会に生き

る限り、他の人との関係は生じるのです。 皆さんは若い方が多いと思いますので、 生まれ育った家庭が初めての集団

だったのではないでしょうか。 その家庭でさえもよく問題が生じます。 父親とうまくいかなかった、 母親とうまくいかなか

った、兄弟姉妹とうまくいかなかったなど思い出すことがありませんか。  そして、学校です。 同じ年齢の集団である

クラスの中で、 同じ趣味を持つ部活動の仲間たちの中で、 先生との間で、色々な問題を持った経験があるのではない

でしょうか。 不登校や引きこもり という言葉が当たり前のようにあふれている社会になりました。 私が小学生だった

頃は、保健室に行くのは、けがをしたときか、急に熱を出した時と相場は決まっていました。 保健室の先生は日まで楽で

いいなあと子供心に思ったものです。 

  みなさん、 人とは人から逃れられないものですよ。 そう思ってあきらめることがまず大切です。 それを知らずに、

逃げようとしている高校生をよく見かけます。 それは無駄だよ と言ってあげたいのですが、 当事者は聞く耳はなく、

無駄に時間が流れていきます。 

   私には、もう無くなりましたが、生涯独身で通した叔母が一人いました。 戦争で婚約者を亡くし、結婚適齢期に

男性の数が不足していて、お見合いをする気もなかった彼女は安定した大きな会社の電話交換手として定年まで働き

続けました。 お金だけが頼りとよく貯金をして、周りはマンション購入を勧めましたが、安アパートで暮らし続けました。

お風呂もシャワーもなく、お風呂屋さんに通っていました。 硬膜外出血で倒れ、近くの伯父夫婦と警察に発見された時

には、実印が首から下げられていたとのことです。 貯金は残された4人の兄弟で分けられました。 この叔母を思い出す

と、どんなに孤独だったのかなあと感慨深いものがあります。 戦争世代の女性が、この男性中心の日本社会を一人で

生き抜くのは想像を超える辛いものがあったことでしょう。 それに引き換え、私は両親が父方の父母と同居していたため

幼いころから家族を嫌い一人になりたいと願っていました。 学校では、それなりに勉強ができましたが、優等生に見られ

て仲間外れにされることが怖く、勉強をしていないふりをしていました。 先生に目をつけられるような服装や髪の毛の色の

人と仲良くしていました。 そういう矛盾した自分を嫌ってもいました。 中学の美術の先生に「あんたは美人やない」と言わ

れ、女は美人でないといけないと知りました。 今ではあの先生に感謝しています。 あの無神経さで私は世の中を少し早

く知ることができました。 

  一人の孤独を選ぶか、 複数の煩雑さを選ぶか、これは人が結婚するかどうかを決めるときに大切な基準だと思って

います。 しかし、社会ではそれを選ぶことはできません。 必ず複数なのです。 そのことを覚えていてください。 何もな

いことはありえないのです。 そう諦めて、その煩雑さにどのように付き合っていくかを考えましょう。 所詮、家族ではない

人との付き合いですから、一生続くわけではありません。 その限られた時間の中で、できれば軋轢が生まれないように考

えましょう。 相手の主張、好み、癖などをそれとなく、しかししっかりと捉え、対処方法を見つけましょう。 最初は大変でも

慣れてくると、案外簡単です。 ここで大切なのは、背景にある文化です。 日本の文化は自己主張をせず、相手に合わす

ことが美徳とされてきました。 今でも日本人だけなら、ビジネスの世界であってもそういう側面があるのではないでしょうか

。 でも今や、インターネットが世界中を一つにし、どんなビジネスでも日本だけというわけにはいかないでしょう。 社内公

用語は英語という企業も増えています。 英語をものにするとは では書きませんでしたが、 言語を学習する時の盲点は、
その文化だと思っています。 人間関係もそれに大きくかかわってきます。 私は、留学時代、一番つらかったことは、英語

がわからないことではなくて、ルームメイトの女の子にいつも 「YES」 か 「NO」 かを迫られることでした。 他民族から

なる国々では、日本のように阿吽の呼吸は通じません。 まず、自分の意見を、立場をはっきりさせることが要求されます

。 これからビジネスの世界で活躍される皆さんには、是非そのことを知っておいてほしいと思います。

 人とのかかわりは、 相手を尊重しながら、つかず離れず、 意見が合わなくても、 死ぬまで一緒にいるわけではありま

せん。 そういう考え方の人もいるのか、と開き直って、妥協できるところを探し、それでも合わなければ、少し議論し、 あ

るいは大いに議論し、 納得できる合意点を見つけることです。 それも限られた時間内に行う必要があります。 これは

大きなストレスです。 このストレスとどう付き合うかが次の課題です。 自分なりのストレス対処法を見つけることが大切

です。 私はこれに失敗し、何度も体調を崩し、病気になりました。 だから、若い皆さんには健康で幸せであってほしいと

願うのです。