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6  第一印象 で決まる

  高校の教員を長くしていると、中学生が高校を受験する際の面接と、高校生が大学専門学校を受験する際の面接練

習や就職のための面接練習などに深くかかわってきた。 3,4分の面接から、10分や30分の面接と長さは様々だが、基本

は同じであると思っている。 まず、身だしなみである。 全体の印象、髪の毛、表情、服装、姿勢などのいわゆる外見が

非常に大切である。 「人間は中身が大切だ」 と声を大にして正論を叫んでも、面接の場では本当の中身はわからないも

のである。 ビジネスの世界でも、これは同じだと思う。 見た目がとても大切だ。 ハンサム、美人はやはり得をするだろ

う。 しかし、顔のつくりよりも、全体の印象の方が大きな影響を持つと考えている。 姿見という言葉をご存じだろうか。

全身が映る鏡である。 毎日職場へ向かう前に、自分自身を前から後ろから横からとチェックをしてほしい。 清潔感があ

り、背筋がピンと伸びているだろうか。 笑顔があふれているだろうか。 疲れた顔で、よれっとした服装で、猫背の前かが

みで、契約を取ろうとしてもかなり無理がある。 「この人となら話してみたい」 という好印象をまず与えることができれば、

ビジネスの第1歩は成功していると思う。  まず、第一印象なのである。

  高校入試で受験生の中学生にまず質問することは、「なぜこの高校を希望したのですか」という志望動機である。

中学校で随分練習してきているのか、ほとんどの生徒がすらすら答える。しかし、それのもかかわらず、その言葉が、

自分のものになっている生徒と、言葉だけが浮いているような生徒に分かれる。 これはどれだけ真剣に、その高校につ

いて調べたか、本当に入学したいという熱意があるか、言葉を上手にまとめて相手に伝えることができる能力があるかな

どという個人の資質と努力の違いによると思う。 高校生がそれぞれの進路希望に従って、面接練習をするお手伝いをし

ていても同じことを感じる。 丁寧に下調べをし、情報を自分のものとして暗記しているような生徒は、面接でも過度に緊張

することなく、自己表現ができる。 

  ビジネスの世界でもきっと同じだろうと思う。 自分の会社、製品、契約、他社製品との違いなどをよく理解し、何も知識

のない人にでも、説得できるような説明ができる人は、相手に好印象を与え、信頼してもらえるし、商品を購入していただ

けるかもしれない。 その場はだめであっても、次の機会にうまくいくかもしれない。

  その人となりや本質は、一生かけても理解できないかもしれないのである。 ビジネスの場では、まず、第一印象であり

その後の限られた時間でどれだけ正確に丁寧に売り込もうとする商品やサービスを説明できるかですべてが決まると言っ

ても過言ではないだろう。 プレゼンテーションが広く行きわたった理由もそこにあると思っている。