トップへ

TOEIC対策授業

1 9年前、商業高校へ転勤が決まり、3月に会議に行きました。 会議の後校長先生に呼ばれました。 前々任高校で
  同僚であられた先生は、商業の専門家で、在任中に何か新しいことをしたい、学校を活性化したいと意気込んでおら
  れました。 私に、「TOEIC対策授業」を作れと命じられました。 商業科目の「実務英語」を英語科へ移し、「学校設
  定科目」にするのでその中でどのようなものでもよいから現在社会で最も用いられているTOEICを商業高校生に受け
  させ成果を上げよというのです。 私は自分が勉強のため何度もTOEICを受け、その時過去最高が「940」だったので
  全く知らないことではないけれど、高校生に教えることができるのだろうかと疑問と不安を持ちました。

2 転勤と実態調査
  転勤早々、いくつかの学校へ酋長が命じられました。 先進的な取り組みをしている学校の実態を見てこいというもの
  です。 ずいぶん遠くの学校まで行きました。 それらの学校から得られる情報は大学でのTOEIC対策でした。
  まず、マクミラン社のアメリカホームステイ編、留学編のカラーテキストとビデオを購入していただきました。 これを
  授業に使おうと決めました。 次は根幹となるシラバス作成です。 出版されているTOEIC対策本を片っ端から読み
  ました。 標準的な分野別のものから、スコア別のものから、 テクニック的なものまで本当にたくさんの対策本が出版
  されていました。 途方にくれました。 週2時間の時間をどのように使えば高校生に力をつけることができるのだろうか
  と悩みました。 

3 アルク社の助けとアルクでの学習
  私は長年語学のアルク社の会員です。 行き詰まり、会社へ電話しました。 すると担当の方が親切に対応して
  くださり、なんと担当者と有名なヒロ前田先生が、学校まで来てくださったのです。 相談するうち、 進学のベネッセ社
  と語学のアルク社が初めて協力して作成した「標準ノート」シリーズが良いと進めてくだいました。早速取り寄せると
  まさしく私が求めていたものでした。 音声導入から書くことまで上手に網羅されています。 易しいレベルを高校
  2年生のクラスで、その上のレベルを3年生のクラスで使うことを決めました。
  
  その後、「スキルアップ900点以上指導者講習会へのお誘いがアルク社からありました。 東京ですし、10万以上かかり
  これは自腹です。 迷いましたが、授業を組み立てるには言った方が良いと2泊3日の講習会へ通いました。
  目からうろこでした。 ロバートヒルキ先生とヒロ前田先生の天才的なお二人から出る1つ1つの言葉が勉強でした。
  来られていた方々は、さすがに900点以上という感じで、大学の先生、専門学校の先生、個人の経営者など顔ぶれ
  も多様でした。 高校の教師は私一人でした。 ある方に、「珍しいですね。 高校の先生って英語できない人多いでしょ。
  会議も日本語だし。」 と言われ 愕然としました。  世間はそのように高校教師を見ているのかと実感しました。
  確かに、読解中心で、会議は日本語、部活第一と言う感じはぬぐえません。 それが実態です。
  
  そん講習会で「直前の技術」 というヒルキ先生の名著と出会いました。 テクニック別なのですが、スモールステップなので
  高校でも導入できると決めました。  語彙集もアルク社の「TOEIC出るとこだけ」に決めました。

4 シラバス作成
  転勤2年目には、学校設定科目「TOEIC対策授業」を立ち上げなくてはなりません。 シラバスを書き始めました。週2回ですから
  2単位です。 「標準ノート」「直前の技術」「英単語出るとこだけ」を授業回数で割ってみて、 可能なペースを決めていきました。
  TOEIC運営委員会が出版している過去問も取り入れることにしました。 何とかシラバスの形が整ってきました。

5 授業の進め方
  生徒さんの英語力は決して高いと言えません。 1年は全員同じ科目を履修します。2年時に「ビジネスコース」を選択した生徒さんの
  選択科目として「TOEIC対策」ができました。 15名程度の2年生でスタートです。 分厚いテキストにおっかなびっくりの彼らを見て、
  大変なことは承知でプリント宿題を作り始めました。 1時間(50分授業)で進めることが可能な範囲のテキストを週苦笑コピーして
  英単語を抜き出し予習させるというものです。 これを授業の最初にチェックして授業に入ります。2時間ともルーマニア人とのティーム
  ティーチングでした。 1時間はマクミラン社のビデオから導入し、生の英会話に視覚と聴覚から触れさせ、リピートすることで、質問に
  応えることで、英語の定着を図ります。 そのあとTOEICの問題解説を2人で英語と日本語で行います。 生徒は予習で単語を調べて
  来ているので、内容が難しくてもなんとかついてくることができました。 もう1時間は「標準ノート」を用いて基本のリスニングを鍛えます。
  センターレベルよりやや高めと言う感じでした。 これも生徒は良くついてきました。 週に一度「出るとこだけ」から単語テストも行って
  いました。  あっという間の日々でした。

6 TOEIC受験
  IPという学校内で受験できるTOEICを11月に実施しました。 なんと、2人の生徒さんが500点を超えました。 これはびっくりでした。 
  次の年は2,3年生の履修が始まります。 私は授業を勧めながら可能な限りの情報を集めていました。

7 TOEIC Bridge 全校導入
  TOEICに興味関心を持たすには1年時にTOEIC Bridge というTOEICのジュニア版を1年生全員に受験させることにしました。 これは
  もめました。 英語科の中でも反対が多く、費用も学年日からなので学校全体にかかわる問題でした。 とても疲れていました。
  何とか導入しましたが、 私一人でやっていくのは限界だと感じ、 わかりやすいシラバスを書き、誰でも教えられるようにすることが
  目標となりました。

8 助け手
  3年目にやっと他の英語科の先生が2年生を教えてくださいました。 ホッとしました。 組織で動くことはコミュニケーションが欠かせません。
  私はその授業の立ち上げから6年間かかわり、他の先生に任せて転勤しました。