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胃潰瘍


【胃潰瘍とはどんな病気か?】

 胃潰瘍とは酸やペプシンなどによって胃壁が障害され欠損した病態をいいます。すなわち転倒したときに肘や膝にできる擦り傷が胃壁にできているような状態 です。十二指腸潰瘍と合わせて消化性潰瘍と呼ぶこともあります。胃壁は内から粘膜層、粘膜下層、固有筋層、漿膜層の4層構造をなし、粘膜層のみの障害をび らんといい、粘膜下層より深い組織欠損を『潰瘍』と定義しているそうです




【胃潰瘍の原因は?どうしておこるのか?】

 胃十二指腸潰瘍の原因として、これまでは胃酸による粘膜障害が中心に論じられてきました。1983年、WarrenとMarshallによって慢性胃炎 患者の胃粘膜からピロリ菌が分離、培養され、その感染が粘膜障害や潰瘍の成因に大きく関与していることが明らかになりました。
 ピロリ菌はらせん状のグラム陰性桿菌で、ウレアーゼ活性を有し、尿素からアンモニアを産生し胃内のpHを中和し胃粘膜に生息している細菌です。その診断 には内視鏡検査下での生検組織を用いた鏡検法、培養法、迅速ウレアーゼ法と非侵襲的な血清抗体法、尿素呼気試験があります。胃潰瘍の90%以上、十二指腸 潰瘍ではほぼ100%の患者でピロリ菌感染がみられます。ただし、ピロリ菌感染が即、潰瘍を起こすのではなく、ピロリ菌感染によって胃炎が起こり、潰瘍が できやすくなったり、治りにくくなったりすると考えるべきです。
 潰瘍のできる直接的なきっかけとしてはストレス、喫煙、大量飲酒、暴飲暴食をはじめ多様な因子があると推測されます。もう1つの原因として薬剤性潰瘍が あり、腰痛症、関節リウマチで処方される非ステロイド系消炎鎮痛剤、脳梗塞や心筋梗塞の予防に用いられるバファリンなどがあげられ ます。いずれも胃粘膜血流を低下させることにより胃粘膜障害を惹起します。



【胃潰瘍の症状は?】

 胃潰瘍の症状として、げっぷ、悪心、胸やけ、もたれ感、食欲不振、心窩部痛、背部痛などがみられます。疼痛は胃潰瘍では食後に強く、十二指腸潰瘍では空腹時に症状が強いといわれています。時に吐血や下血、黒色便などの消化管出血症状を認めることがあります。



【胃潰瘍の診断は?】
1. 胃X線検査(消化管造影検査):
 胃癌検診でなじみの深い検査法で、白色の液体であるバリウムを服用し、胃の変形や凹凸を観察し、X線を用いて撮影する検査です。活動 期の潰瘍は胃壁の外 に突出したバリウムの溜まり像(ニッシェと呼びます)として描出され、瘢痕期の潰瘍はひきつれ像や伸展不良像とし て観察されます。
2. 上部消化管内視鏡検査:
 内視鏡検査は直接、潰瘍病変を確認し診断できます。白苔の性状、再生上皮の有無、周囲粘膜の浮腫の状態などにより活動期、治癒期、 瘢痕期に分類していま す。また、胃潰瘍では悪性病変との鑑別が大切であり、特に早期胃癌との鑑別は困難なことも少なくありません。内 視鏡検査では同時に生検を 行うことができ、その病理組織を調べることで診断が可能です。